今回取材したのは、岩手県紫波町の温浴施設『ひづめゆ』でマネージャーとして働く佐々木千明さん。
『ひづめゆ』は旧紫波町役場庁舎の跡地活用事業として、町民の誰もが訪れることができた旧庁舎の場所を、再び人が集まる、且つ交流を楽しめる場所にすること、そして、旧庁舎という大きな拠点を失った日詰商店街地区のにぎわい創出に寄与したいという想いから生まれた温浴施設。高濃度炭酸泉による温浴施設だけでなく、サウナ発祥の地と言われるフィンランドでは交流の場として親しまれているサウナ施設も完備しています。
千明さんは紫波町で暮らしながら、『ひづめゆ』のマネージャーとして、多世代とコミュニケーションをはかり地域を繋ぐお仕事をしています。いつも明るく、人を笑わせることが好きな千明さんの生い立ちから現在に至るまでを辿りました。
今回取材したのは、岩手県花巻市中笹間で『田葉子屋 (たばこや) 』と女性専用の施術院を営んでいる佐藤智美さんです。
『田葉子屋』は、ドイツ製 Opal 毛糸、オーガニック食品、地元の無農薬農家の野菜、オーガニックコットンのナプキン、ハーブティーなど、心身健やかな暮らしを提案する小さな商店で、地域を繋げるひとつのコミュニティとも言える場所です。智美さんは店主としてお店に立ち、人と人を繋げ、暮らしをサポートする役割を担っています。また、「Ba-therapy (施術) 」、「Body work (yoga.pilates) 」 を行い、様々な症状からの治癒力をサポートする理学療法士でもあります。
自由で創造的、よく笑い、人を包み込むような包容力がある。他者に大きく開かれているけれども、その距離感が絶妙で、仕事とプライベートが地続きにあり、裏表がない自然体を大切にしている智美さん。
今回の取材では、多くの魅力を持つ智美さんの生い立ちから現在に至るまでを辿り、その視座や暮らし方を探求しました。
今回取材したのは、畑をフィールドに健康的な町づくりを目指す『畑多楽縁』を主宰する星真土香さんです。『畑多楽縁』は、社会的処方をコンセプトに、サードプレイスとして人と人とのコミュニケーションを大切にするコミュニティを目指しています。
真土香さんは、畑でコミュニティナースとして、病気や障がいの有無に関わらず地域で生活する人を対象に、日常の健康意識を高め、病気の予防につとめるだけでなく、心のケアまで幅広く関わるお仕事をしています。心身を総合的に診て、初期段階での健康状態の把握や一時的な救急処置、日常的にみられる病気や軽度の外傷の治療、訪問診療などを行い、特殊な症例については、専門医に紹介する役割を担う、イギリスやオランダでよく見られるプライマリ・ケアに近い営みとも言えるかもしれません。
『畑多楽縁』での真土香さんはとにかく動き回り、周囲に光をあて、場の空気をあたため、人の心を解きほぐしていきます。生きとし生けるものへ分け隔てなく、恵みを降り注ぐ太陽のような存在です。そのようなパフォーマンスを引き出せるのは、真土香さんがHOMEとしての「畑」をフィールドにしているからかもしれません。幼少期から田畑がすぐ傍にあった真土香さんにとって「畑」とは、自分の原点に近い、いわば、“わたし”に還る場所であり、“わたし”を生かす場所でもあるように感じられました。
今回のインタビューでは、社会的処方について、コミュニティにおけるコミュニケーションの働きや、それを機能にさせるデザイン構造、チームづくりの在り方を探るだけでなく、星真土香さんの人間性を読み解くことで、豊かに暮らす上で大切な「“わたし”に還る」「“わたし”を生かす」ということを探求しました。
今回取材したのは、岩手めんこいテレビのプロデューサーとして勤務している菊地十郎さんと元岩手めんこいテレビのアナウンサーで、現在は退職して博士号を取得、研究者として活動している坂口奈央さんです。
ご夫婦であるふたりは磁石の両極のように正反対の性格をしています。十郎さんは決して口数が多いタイプではなく、あまり自分のことを話しません。感情表現も抑えめで、人の話を聴いている方が好きという印象です。反対に奈央さんは周囲のことに気を配りながらも明瞭に言葉にしていきます。感情表現も豊かで、場を華やかにする。ふたりは周囲の人々にとって、太陽と月のようになくてはならない存在ですが、光の照らし方が異なります。 ただ、異なることが相補性を伴っていて、相乗効果による、夫婦としての、あるいは人と人が対峙する中で生まれる豊穣さとはこういうことと示すような、新しい豊かさのシンボルを体現しているように感じます。
取材するにあたってテーマに据えたのが、「コミュニティの中で生きるとは?」という問いでした。ふたりの暮らしの中で帰属するコミュニティから何を受け取っているかを探ることで、ふたりの豊かさが浮かび上がってくるかもしれない、とそう考えました。その為に、 ふたりの過去を知り、それぞれの人生で得てきたもの、そして、反対に失ってきたものを知ろうと思いました。それを理解することで、ふたりが欲しているもの、コミュニティによって与えられるものの本当の価値がようやくわかってくるような気がしました。その探求は人間がいつの時代も絶えず行ってきた、“過去から何を受けとり、何を未来へつなぐのか”という壮大な物語へと合流していくことでもあるかもしれません。
今回取材したのは、紫波町役場に勤める髙橋哲也さんとヴィーガンアップルパイ&キッシュを専門とする『はちすずめ菓子店』の髙橋静さんのご夫婦です。取材を通じて、おふたりは大人になれば本来難しい「純真性」を保ちながら生きるということを上手くバランスをとりながら暮らしの土台に据えているように感じました。実直に地に足を付けながらも、どこか寓話性/詩的なものを大切に生きる。そんな本当に豊かな暮らしをおくっているような光景が散りばめられていました。
その暮らしを読み解くにあたって、テーマは静さんが営む『はちすずめ』の名前の由来に関係する、宮澤賢治の著作『黄色のトマト』にしました。『黄色のトマト』は、小さな兄妹が”黄色”のトマトを”黄金”のように価値のあるものだと思い、サーカスの入場料として持っていくのですが、経済という価値基準がある大人に拒絶されてしまう物語です。この物語には大人になっていくにしたがって忘却していく「純真性」というものが描かれていますが、誰かが定めた価値ではなく、自分にとっての価値を大切にしながら生きる、ということが暮らしにとってどのような価値を与えるのか探求したいと思いました。どのような生き方を持ってすれば「純真性」が保たれ、心身ともに豊かな暮らしへ繋がるのか。おふたりの見ている風景を追体験しようと試みました。